現物Bitcoin ETF:暗号資産市場への影響を考察する

2024-02-22

*過去にBinance Globalで配信されたブログの日本語翻訳版です。

https://www.binance.com/en/blog/markets/spot-bitcoin-etfs-exploring-potential-impacts-on-the-crypto-landscape-7488010010338549466

要点

  • ビットコイン上場投資信託(ETF)によって、投資家はデジタル資産を直接取り扱うことなく、暗号資産に安全にアクセスできるようになります。米国規制当局による現物ビットコイン ETFが承認されたことで、市場ではここ数か月にわたり、楽観的な見方が広がっています。

  • 一般的には現物ビットコイン ETFが米規制当局により認可されることで、BTCへのアクセス性、流動性、需要、価格がともに上昇すると考えられています。しかし、このようなイノベーションにはそれなりの代価も発生します。

  • BTCへの直接投資は、さまざまな規制対象商品と共存し、多様な投資戦略が可能になり、投資家の多様なニーズに応えることが可能になります。

ビットコイン上場投資信託(ETF)は、BTCを直接取り扱う手間を省きつつ、安全で規制された方法で暗号資産へのエクスポージャーを可能にする金融商品です。このような商品はカナダやヨーロッパにはすでに存在しており、米国の投資家は2021年からビットコインの先物価格に連動するETFを利用できていました。しかし、米国で「現物」のビットコインを保有する規制されたETF(最も一般的には現物ビットコイン ETFと呼ばれる)が、業界ではまさに画期的な商品になると考えられています。

主な定義

ETFは、特定の資産、指数、または資産バスケットの価格に連動し、証券取引所で売買される金融商品の一種です。一般的に、ETFにより、取引所での柔軟な取引が実現すると同時に様々な資産への投資手段がもたらされることになります。そのため、ETFは市場エクスポージャーを分散する実用的なツールとなっています。

暗号資産の登場により、先物と現物の2つのタイプのBTC ETFが登場しました。先物ビットコイン ETFは、BTCの将来の価格に投資するもので、暗号資産を保有することなく、BTCの価格変動へのエクスポージャーを提供します。一方、現物ビットコイン ETFは原資産の保有を前提とし、原資産の価格をより直接的に反映します。現物ビットコイン ETFの所有は、BTCそのものの所有に近いと言えます。

ビットコイントラスト(信託)は、構造と運用が異なりますが、類似点を持つ投資ビークルとなっています。トラストは、実際のBTCを保有する従来の投資ファンドのように機能し、BTCの現物資産を保有します。投資家は、トラストが保有するデジタル資産プールの一部を表す株式を所有することになります。しかし、ETFとは異なり、トラストは商品の性質上、価格にプレミアムまたはディスカウントが発生し、原資産であるBTCの価値から大幅に乖離する可能性があります。

Grayscale ビットコイン Trust(GBTC)は、2015年に米国初の上場ビットコインファンドとしてローンチされました。最初のビットコイン先物ETFは、2021年10月にニューヨーク証券取引所Arcaに上場しました。現在、複数の同様の投資商品が米国の投資家に提供されています。

SECの承認を求めて

2013年に最初の現物BTC ETF上場申請がSECに提出され、その後も多くの申請が続きました。SECは当初、十分に規制されたビットコイン関連市場や、詐欺や市場操作を防ぐための監視共有契約(surveillance-sharing agreements)など、承認に向けていくつかの前提条件を設定しました。その後、複数の企業が修正対応を行ったETF上場申請書を提出しました。ところが再提出の結果は以前と同じく、問題が解決されていないため却下、または拒否を見越しての申請の辞退となりました。

しかし、2023年になり、状況に変化が起き始めました。先物ビットコイン ETFのみが許可され、現物ETFが許可されない理由が明確にされていなかったため、多くの人がSECの決定に混乱していました。8月、米国の裁判所はGrayscaleが主張するこの考えを支持する判決を下しました。SECに対して、GBTCの現物ETFへの転換を拒否したことを再考するよう要求し、先物と現物での扱いの違いについては「恣意的かつ気まぐれ」であると裁定しました。

6月には世界最大の資産運用会社であるBlackRockがビットコインの現物ETFを申請したことも、追い風になりました。この申請には、詐欺や市場操作を抑止するための監視共有契約が含まれており、SECの大きな懸念材料を軽減できる可能性もあります。資産運用会社として高い実績を持つBlackRockのETF申請と相まって、この動きに他の企業も追随しました。

このような動きの中、2023年秋、市場では楽観論が高まり、以前に却下されたETF申請を再提出する企業が相次ぎました。2024年に迫ったビットコイン半減期によるデフレ圧力も、さらに楽観的な見方を強めました。このような事態が進展する中、現物ビットコイン ETFの承認が2024年1月に実現しました。

潜在的な影響について

多くの投資家は、米国の現物ビットコイン ETFが従来の金融と暗号資産市場両方への影響、そしてブロックチェーン業界全体に与える影響について関心を持っています。このようなイノベーションは、ビットコイン価格、デジタル資産への需要、流動性および暗号資産の普及に大きな影響を与える可能性があります。主な楽観的な見方としては、ETFの認可とアクセス性の向上はより幅広い潜在的な暗号資産投資家へのアピールになるとし、暗号資産分野ではさらなる普及と技術革新が進展するだろうというものです。このような効果は期待できそうですが、その規模と規模を予測することは困難です。

現物BTC ETFが同様の効果をもたらすとは考えにくいものの、ゴールドETFの歴史的な事例を検証することで示唆が得られる可能性があります。ビットコイン同様、ゴールドは一般大衆にとって比較的アクセスしにくい資産であり、個人でこれら資産も直接購入して保管するにはどちらの資産とも特別な努力とリソースが必要になります。2004年、運用資産額最大のゴールドETFであるSPDR Gold Shares(GLD)がローンチされ、瞬く間に総資産額で$10億を超えました。2010年には$500億を突破しました。

ETFの保有は原資産の直接所有権を放棄することになりますが、この犠牲によりアクセス性が向上します。そのため、より幅広い投資家がエクスポージャーを簡単に得られ、資産への需要と流動性が高まります。ゴールドETFの登場はこの資産の取引に大きな影響を与え、アクセス性の向上により市場の取引量と流動性の向上につながりました。

米国の現物ビットコイン ETFにおいても、同様のメリットを享受できる可能性があります。そうなると、あらたな普及と技術革新で新時代の到来を告げる可能性もあります。ビットコインはしばしば「デジタルゴールド」と見なされているものの、単純に一つの資産の歴史を振り返りそれを他の資産へ当てはめることで将来は予測できません。しかし、起こりうる影響を考察するにあたり、類似点を取り上げることは無駄にはなりません。米国の現物ビットコイン ETFの長所と短所をさらに深く考察を続けていきましょう。

ゴールドETFと同様、このアクセス性の向上により、ビットコインの価格、需要、流動性が高まり、普及における新たな段階に移行する可能性があります。さらに、この流動性の向上と投資家ベースの多様化により、ビットコインの価格変動を安定させ、市場の流動性、予測可能性、および資産に対する投資家の信頼が高まる可能性があります。

米国の現物ビットコイン ETFの承認は、単にBTCでの市場での影響を超え、暗号資産業界の合法化の兆候と見なされます。これより、暗号資産業界はさらなる技術革新とマスアドプションに向け、新たな水準の受容、信頼、成熟を迎えることになる可能性があります。

現物ETFには標準化された報告書の提出が求められるため、規制当局による監視と透明性をさらに高めることになるでしょう。その結果、セキュリティが強化され、詐欺や盗難のリスクも軽減されます。これにより、より広範な金融業界において暗号資産業界の信頼性が向上し、信頼の基盤が拡大していくことになります。

懸念材料とリスク

米国の現物BTC ETFの承認をめぐる楽観的な見方が広がる一方、リスクや懸念材料にも目を向けるべきです。まず、ビットコインの直接所有権を持たないということは、投資家はビットコインのエコシステムに参加できず、分散型デジタル資産を所有するメリットを享受できないことを意味します。

また、ETFでは管理手数料が請求されるため、通常の保有コストはビットコインを直接保有する場合のコストより高くなり、暗号資産投資コストとして上乗せされることになります。とは言え、ETFがもたらす安心感を考えれば、大多数の投資家はこのコストを喜んで受け入れるでしょう。

より広範な暗号資産市場における影響の予測は、従来の金融市場よりも困難なままとなります。ETFは原資産の価格変動を追跡することを目的としており、ビットコインの価格変動が現物ビットコインETFの価格にも反映されます。しかし、ETFの価格は市場動向や管理上の理由によりビットコインの価格から乖離する可能性があります。ETF価格はビットコインの価格に対して、割高もしくは割安になる可能性があります。

最後に、現物ビットコイン ETFの導入はBTCを規制とより密接に結びつけることとなり、市場は政策決定に対しより敏感に反応することになります。不利な規制措置が導入されればETFの価値に悪影響が及び、最終的にはビットコインの価格が引き下げられる可能性があります。

まとめ

米国で規制された現物ビットコイン ETFは、暗号資産業界とより広範な金融環境に大きな影響を与え、さらなる普及、信頼性向上、技術革新、および規則当局の明確な指針の制定を促進させる可能性があります。このような展開は、暗号市場へのアクセスを簡素化し、技術に詳しくない投資家でも暗号資産を自分自身で管理する複雑さを伴わずに、BTC価格変動へのエクスポージャーを得られるようになります。しかし、他の新興投資ビークルと同様に、デメリットやリスクについて無視することはできません。

現物ビットコイン ETFが既存の暗号資産投資の一部としての地位を築くことになるのが、最も調和のとれたシナリオと言えます。BTCへの直接投資および様々な規制監督下にある投資商品は共存することとなり、多様な投資戦略が可能になり様々なリスクプロファイルや選好に対応することになるでしょう。米国で規制された現物ビットコイン ETFの登場は、ビットコインだけでなくより広範な暗号資産業界が大規模な普及と合法性を見る、新たな時代の到来を告げるものとなります。

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