TRON公式が紹介したAlliumのデータでは、ステーブルコイン決済におけるTRONの存在感が非常に大きいことが示されました。
その投稿によると、
✅ステーブルコイン決済量の約90%がTRON上で決済
✅決済額に占めるB2Bの割合は、2024年の27%から2026年Q2末に36%へ上昇
と紹介されています。
ただし、ここで注意したいのは、
「世界中のステーブルコイン取引量の90%がTRON」
という意味ではないことです。
取引所間の資金移動、DeFi取引、裁定取引、ウォレット整理などを含む、すべてのオンチェーン送金を対象にした数字ではありません。
Alliumが分類した「決済用途」のデータに基づく数字として見る必要があります。
では、なぜ決済用途ではTRONの存在感がこれほど大きいのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
1⃣ TRONは「保有する場所」より「送るための場所」
EthereumやSolanaなど、多くのブロックチェーンでは、
・DeFi
・NFT
・ミームコイン
・ゲーム
・トークン取引
など、複数の用途が注目されています。
一方、TRONの中心にあるのは、以前から一貫してUSDTの送金です。
特に、
✅取引所から取引所への資金移動
✅海外に住む家族への送金
✅企業や個人事業主への支払い
✅銀行口座を持ちにくい地域でのドル保有
✅国境を越えた商取引
といった用途で利用されています。
つまりTRONは、USDTを発行・保有するネットワークであるだけでなく、
「実際にデジタルドルを動かすネットワーク」
として成長してきたと考えられます。
2⃣ 安いだけでは90%規模にはならない
TRONが利用される理由として、よく挙げられるのが手数料の安さです。
しかし、手数料が安いブロックチェーンはTRON以外にも存在します。
それでもTRONに決済が集まる理由は、単純な価格競争だけではありません。
✅多くの海外取引所がTRC-20 USDTに対応
✅対応ウォレットや決済サービスが多い
✅USDTの流動性が非常に大きい
✅送る側と受け取る側の両方が使っている
✅長期間にわたる送金実績がある
このようなネットワーク効果が積み重なっています。
たとえば、どれだけ性能の高い送金サービスでも、受取人が使えなければ意味がありません。
TRONは、送金者、受取人、取引所、ウォレット、決済事業者がすでに広くつながっていることが大きな強みです。
3⃣ B2B決済の割合が27%から36%へ
もう一つ重要なのが、決済額に占めるB2Bの割合が上昇していることです。
B2Bとは「Business to Business」の略で、企業から企業への取引を意味します。
たとえば、
・海外の仕入れ先への代金支払い
・業務委託先への報酬
・企業間の資金移動
・貿易や物流に関する決済
・グローバル企業の拠点間送金
などです。
個人が一度だけ100ドルを送るのと、企業が毎月数万ドルの取引代金を支払うのでは、ネットワークに与える影響が異なります。
企業間決済は一般的に、
✅1件当たりの金額が大きい
✅継続的に利用されやすい
✅送金時間や手数料の削減効果が大きい
✅経理や資金管理への組み込みが必要
という特徴があります。
TRON上でB2B決済の割合が増えているのであれば、TRONの用途が個人間送金だけでなく、企業活動へ広がっている可能性を示します。
4⃣ なぜ企業は銀行ではなくステーブルコインを使うのか?
当然ですが、すべての企業が銀行送金をやめて、USDTを使うわけではありません。
国内送金であれば、銀行の方が使いやすく、法的な保護や返金対応も整っています。
一方、国境を越える取引では、
・着金まで数営業日かかる
・複数の銀行を経由する
・中継銀行の手数料が発生する
・為替交換のコストがかかる
・休日や営業時間の影響を受ける
・受取額が事前に分かりにくい
といった課題があります。
ステーブルコインであれば、原則として24時間365日送金でき、ブロックチェーン上で送金状況も確認できます。
特に、銀行インフラが十分に整っていない地域や、国際送金コストが高い地域では、この差が大きくなります。
TRONが強いのは、クレジットカードが便利な国のコンビニ決済ではなく、
「既存の国際送金が不便な場所」
なのだと思います。
5⃣ TRONの競争相手は他のブロックチェーンだけではない
TRONの競合として、Ethereum、Solana、BNB Chain、Baseなどが比較されることがあります。
しかし、決済という観点で考えると、競争相手はブロックチェーンだけではありません。
・銀行の国際送金
・SWIFT
・送金事業者
・フィンテックアプリ
・クレジットカードネットワーク
・各国の即時決済システム
も競争相手になります。
TRONが目指しているのは、DeFiのTVLランキングで1位になることだけではなく、
「世界中でドルを移動させる選択肢の一つになること」
ではないでしょうか。
6⃣ 私見:重要なのは90%という数字だけではない
今回の数字は非常にインパクトがあります。
一方で、対象となる決済の定義や集計方法によってシェアは変わるため、
「世界の決済の90%をTRONが支配している」
とまで広げて解釈するのは適切ではありません。
私が重要だと感じるのは、約90%という見出し以上に、
「TRON上の決済でB2Bの割合が高まっていること」
です。
TRONはこれまで、個人間のUSDT送金に強いネットワークとして成長してきました。
そこに企業間決済が加われば、
個人が使う送金網
↓
企業も使う決済網
↓
金融機関やサービスに組み込まれるインフラ
という次の段階へ進む可能性があります。
TRONを見る際は、USDTの発行量だけではなく、
「そのUSDTが、誰から誰へ、何のために動いているのか」
ここまで確認することが、今後ますます重要になりそうです。
